耐力壁の壁倍率の違いをちゃんと理解してますか?セールストークに騙されるな!【地震に強い家を作ろう~木造軸組工法編~】

構造大好きミです。

この記事では、ハウスメーカーのカタログ等で紹介されている壁倍率について紹介します。

壁倍率●●倍相当などPRされていますが、相当って実際はどうなの?って思いますよね

ちゃんとどういう意味か理解できるように説明したいと思います。

壁倍率とは

壁倍率は壁の強さを表してる

木造住宅で耐震性を壁倍率という言葉を聞いた事があるとおもいます。

壁倍率は簡単に言えば、強さを表しています。

具体的な数値でいうとは1倍とは壁1m当たり1.98kN耐えれることを示しています。重さで考えると約200kgの重さを負担できるということですね。

(上の200㎏は地震等の時に水平方向にかかる力が200㎏です。)

単純に強さの倍率と思っていたでければよくて、数値が大きいほど、また、その壁が長いほど強くなっていきます。

なので、壁倍率が大きいものが使えるということは、壁が短くて済むということになります。

例えば壁倍率1倍の壁であったら10m必要(1x10x1.98=19.8kN)だった場合、壁倍率5倍であったら2mで済む(5x2x1.98=19.8kN)ということになります。

壁倍率がどのように決まるか。

汎用性の有る壁倍率は建築基準法施行令46条に規定されます。

よく使われるもので例を挙げると、

・3.0cm×9.0cmの木材による筋交い : 1.5

・4.5cm×9.0cmの木材による筋交い : 2.0

・構造用合板 : 2.5、3.7等(釘ピッチ等により異なる)

・石膏ボード : 0.9

などです。

この壁倍率は、実験結果から施工誤差や材質の良し悪しのむらを安全率として考慮して決定されています。

法律で決められているものの他にも、ノボパン等大臣認定を取得した特殊な壁材も壁倍率を指定することができます。

そして、この壁倍率は組み合わせて足し合わせることができます。

例えば

4.5cmの木材による筋交いx2+石膏ボード=2.0×2+0.9=4.9倍

構造用合板+石膏ボード=2.5+0.9=3.4倍

等です。

筋交いは柱と柱の間に配置し、面材(構造用合板、石膏ボード等)は柱の横などに張る 為、基本的に面材+筋交い+面材で足し合わせることができます。

また、筋交いも交差すれば2本配置できます。

このように各仕様の倍率が決まっており、それの足し合わせで壁倍率が決まってきます。

壁倍率を用いた計算について

壁倍率の用途は一般の方にはあまり知られていないませんが、2つの計算に用います。

その2つというのは簡易的な、いわゆる壁量計算と複雑な構造計算です。

基本的に平屋、または2階建ての木造住宅であれば、簡易的な壁量計算のみで設計を行っています。

3階建て以上は壁量計算および構造計算の両方を基本的には行います。

(設計方法によっては壁量計算を省略できますが、一般的には両方行うと思ってください。)

また、長期優良住宅や、耐震等級を取る際も壁量計算および構造計算の両方を行われることが多いです。

(構造計算の代わりに壁量計算の発展版を行うこともありますが、構造計算の方を選択する設計者が多いかと思います。)

壁倍率の制限

壁倍率について、各仕様の倍率の足し合わせと記載しましたが、足し合わせた合計の制限があります。

壁量計算では簡易的な計算であるため、極端な設計を避けるために5倍を上限とするよう法律で決まっています。

構造計算では法律では、制限されていませんが技術書(木造軸組み工法住宅の許容応力度設計)で基本的な足し合わせは7倍までとされています。

ただ、設計者の判断や実験、研究等によりそれ以上でも見込むことができるようになっています。(念押しですが、構造計算についてのみです。)

メーカーが出している壁倍率について

私がこの記事で書きたかったのかここからです。

一読してメーカーの資料に騙されずに判断してください。

実験で算出された壁倍率は注意しよう。

法律的には●●倍ですが、当社の材料で実験した結果☆☆倍で安全!というようなHPなどを見かけます。

でも、これって工場で高品質に管理された試験での試験結果で、施工誤差、雨による劣化など安全率を考えられていないので、単純に比較できない数値です。

実際は、☆☆倍あるから安全なんだと勘違いしないように注意してください。

また、もし仮に壁自体が試験通りの耐力(☆☆倍)が出たとしても、壁を固定している金物は設計用の壁倍率(●●倍)から設定して、ギリギリの強さのものを選択する為、結局●●倍の耐力までしか負担できません。

☆☆倍で設計することを名言していない限り、実際●●倍でしか設計しないので、勘違いをしないように気を付けてください。

耐力壁の壁倍率5倍は普通の事。

●●工務店は法律上最大の壁倍率5倍を適用!みたいなHPをみかけます。

すでに説明しましたが、筋交い等の組み合わせで5倍にすることができ、そこまで難しい数値ではないので、どこでもできることだと思っていただければよいと思います。

壁倍率5倍を超える壁倍率について

壁倍率5倍を超える耐力壁をうたっているところがあります。これには下記の2つのどちらかを指しています。

一つ目は、既に書きましたが、実験結果が5倍以上なだけで、設計には5倍までしか見込めない(見込むべきでない)場合です。

二つ目は、構造計算時のみ壁倍率5倍を超える数値を用いている場合です。

壁量計算の際は上限の壁倍率5倍を適用、または壁量計算を省略し、構造計算で5倍を超えて見込む場合です。

構造計算の壁倍率の基本的な限度の7倍までは、法律で定められている壁倍率の仕様で到達することができるので、こちらもどこの会社でもできることかと思います。

7倍を超える使用の場合、しっかり実験等を行っていれば用いることもできます。

これは、適用できる会社がかなり限られているので、壁が少なく7倍を超える仕様を適用しないと耐震等級に到達できない場合などには、会社選びの決め手になるかと考えます。

なお、試験等を行った場合でも、壁量計算で5倍を越えることは出来ません。

実際の設計で用いられる壁倍率で比較

壁量計算や、構造計算によって制限が違ったり、壁倍率も法律だったり、実験結果だったり分かりづらいと思います。

なので、手っ取り早く自分の住宅が壁倍率何倍を見込んで設計を行っていくのか聞いて、実際設計に用いる壁倍率で比較してください。

といっても、壁量計算で5倍まで、構造計算で7倍までは標準仕様では用いていなくても、使用していくことはできるので、+料金を払えれば用いてくことができるかと思います。

壁倍率についてのまとめ

この記事をまとめると、壁倍率は下記の通りです。

・壁倍率は強さを示している。

・壁倍率は足し合わせることができる。

・壁量計算と構造計算と2種類の計算がある。

・壁量計算の壁倍率は5倍、構造計算は7倍が上限

・どこの会社でも上限に達することができる。

・実験等を行っていれば構造計算で7倍を超えることが可能(壁量計算で5倍は越えれない。)

・壁が少ないプランで、耐震等級をとるときは7倍を超えが有効の場合もある。

・実際の壁倍率がよくわからなければ、設計に用いる壁倍率を確認する。

メーカーの過大なPRに騙されないよう適切な判断の参考になれば幸いです。

以上!

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