木造住宅に制振装置を入れるか入れないか?構造のプロの判断は?【地震に強い家を作ろう~木造編~】

構造大好きミ介です!

この記事では、構造のプロが制振装置を入れた方がいいか、否かについてお話します。

制振装置入れた方がなんか地震に強くなりそうだと思いますよね。

でも本当に効果があるのかよくわからない。そんな人がほとんどだと思います。

そんな方に、入れるべきか否か判断がつくよう書きました。

結論としては私は耐震等級3をとれば制振装置は不要だと考えます!

まずは耐震と制振の違い

本題に入る前に耐震と制振の違いを簡潔に説明します。

耐震とは

耐力壁を強く多く配置することで地震による変形を減らし、建物全体を強くしていく設計です。

制振とは

建物が変形したときに制振装置を変形させて地震の力を熱などのエネルギーに変換するなどの方法で、揺れを小さくして地震の力を弱めます。

ある程度変形することで、制振装置が働き地震の力を弱くすることで、建物が倒壊することを防ぐ設計です。

(制震装置を入れれば揺れないとアピールしていますが、地面が揺れた分は確実に動くので入れれば全く揺れないということはあり得ないので勘違いしないようにしてください。)

耐震は変形をさせないのに対し、制振は変形を必要とする相反する設計方針です。

木造住宅の設計方針

木造住宅の設計方針は基本的に耐震設計です。

よく行われる制振装置の利用方法は、耐力壁で必要壁量を満足させた上で、追加で揺れを抑制するために制振装置を設置する方法です。

勘違いされている方がいますが、制振装置には壁倍率が設定されていないものが多いです。(大袈裟に言えば、法的に効果を認められていないです。)

それらの制振装置は設計をする際に、制振装置の効果を考慮出来ないため、制震装置以外で地震に耐えれるように設計され制震装置は無視されています。

(制震装置が効率が良いく効く配置等は検討されているかと思います。)

なので、制震装置が設置されている木造住宅も耐震設計により成り立っています。

よって、耐震設計により設計されているのて、相反する設計思想の制震装置を組み合わせても、構造のプロからするとあまり意味が無いと考えています。


制震構造の揺れが抑えられるのは嘘なのか?

設計思想が相反することは分かって頂けたかと思います

制震装置があまり効果がないので有れば、カタログ等で地震が抑えられるのは嘘なのかが疑問が出てきます。

結論から言うと、嘘ではないが、勘違いさせるカラクリが有ると考えています。

勘違いさせる肝となっているのは、繰り返した地震についての効果を宣伝している点です。

(2回目の震度7で揺れが約50%低減!等)

効果を実証するための実物試験は建築基準法ギリギリの試験体と、同条件の試験体に制振装置を付けた物であることが多いです。

ちなみに、建築基準法の地震に対する考えは、大地震が1回起きた際に人命を守ることを目標としています。つまり、大地震1回起きたら倒壊せず、2回目は倒壊してよい。または大地震1回起きたら、その後使えなくなってもよい。ということを、最低限の基準として定めています。

そんな、試験体を震度7で2回揺らして

・1回目:制振装置ありの方が僅かに揺れが少ない。

・2回目:制振装置ありの方が50%揺れが少ない。

という結果が出たとします。

売る側としては50%揺れが少なくなったことは事実でそれをPRすると思います。

しかし、この結果は1回目の地震で耐力壁が壊れてきて初めて制振装置の効果があるということも示していると考えます。

言い換えれば、はじめの地震でダメージを受けなければ、あまり効果を期待できないということです。

この傾向は住友不動産様の実験からも顕著に読み取れると思います。(こちらの試験体は耐震等級3なので、固くなりより制震装置が効かなくなっています。)

木造において耐震と制振の思想が相反(同時に働かない)ことは、実験結果からもご理解いただけると思います。

余談ですが耐力壁を接着剤で接合している会社も有りますが、建物の固さが更に上がるため制震装置がより効かなくなると考えます。

実験結果からの判断

耐力壁が効かなくなっているということは、層間変形角(柱の角度と思ってください)が1/150を超えており、建物に補修が必要な損傷が生じている可能性を示しています。

制震装置を設置して損傷が入るのであれば、耐震等級3以上の壁量計算を満足させて無損傷を目指した方がよいと考えます。

震災後も補修費用がかからず、安心してすみ続けられるからです。

熊本地震ではどうだったか?

耐震等級3で損傷が生じずらいということは熊本地震でも証明されていて、地震での木造住宅の損傷の割合が

現在の法律に適合:61.4%

耐震等級3:87.5%(残りも、小破以下)

と9割の住宅が無損傷となっています。

(割合の引用:くまもと型住宅生産者連合の耐震等級3のススメより)

無損傷以外も小破に収まっていて、耐震等級3+制震装置が入っていたとしても、制震装置が聞き始めるスタートラインまでしか行っていないので、制震装置が入っていたとしても効果はほとんど無かったのではないかと分析します。

以上のことから、熊本地震においても制震装置が無くても耐震等級3を取っていれば問題無いことが分かります。

また、残りの1割の小破が気になるので有れば、耐震等級3より耐力壁を増やしてもらうようお願いすれば良いと思います。

(耐震等級3は等級1の1.5倍なので1.75倍や2倍等)

メーカー等によるとは思いますが、耐力壁を増やすのにプラスで費用が取られない事もあるので、耐力壁を増やして地震の対策をした方がコスト面でもメリットが有ります。

(耐震等級を取るための手数料はかかると思います。)

制震装置の有無での情報が見当たらなかったので、情報をご存じで有れば教えて頂けると幸いです。

制震装置の不要な理由のまとめ

構造のプロの私が木造住宅に制震装置が不要と考えるのは、

・耐震と制震の設計思想が異なるから

・制震装置が効くのは建物に損傷が入ってからだから

・耐震等級3をとれば十分損傷が防げるから(さらに壁を増やした方がなお良い。)

・メーカーによっては耐力壁を増やしてもコストは変わらないことも

ということから判断しています。

正しい情報で地震に強い家作りをしてください。

以上!

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